以前のブログでも少し触れたのですが、今年12月のダンス公演を延期にすることにしました。
ここからは、このことをお伝えしたいけど、今は遠くにいる人に向けた手紙の体裁でお届けいたします。
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Sさま
ご無沙汰しております。井上です。
こちらは明らかな気候変動の影響で、猛暑が続いています。
そちらはいかがですか?
実際に手紙を送ろうにも、宛先をどこにしていのか分からず、もしかしたらネットのほうがそちらに届く可能性が高い気もして、こういう形でメッセージを送ることにしました。
世の中は、世界規模で新種のコロナウイルスとのサバイバル中です。
パラレルワールドに突入したような状態になってしまいました。瞬く間に、本当にあっという間です。
もしかしたら、戦争もこんな風に瞬く間に突入していくのかもしれないと思いました。
以前このブログで、Sさんからの言葉を受けて、世界を続けていくことを誓いました。
それはつまり、ダンスを続けていくという誓いだったわけで、その誓いによって、次の12月の本番に向けて決意を新たにしました。
しかし、公演を延期することにしました。
メンバーで集まって稽古することが、今はできなくなってしまいました。
今回の出演者の多くは、別の仕事をしながらダンスに勤しんでいます。
人と会う機会を増やすということは、互いの感染の確率を上げてしまいます。
多くの人が軽症か無症状ですが、それでも後遺症を抱えてしまう可能性があるそうです。
ダンサーにとって、肺へのダメージがどれだけ致命的なものか。
誰しもに大切な人がいる中で、私たちはそれぞれが自身で感染のリスクから身を守らなければなりません。
仮になんとか上演までこぎつけたとしても、客席数も当初の半分以下にしなければならないですし、感染対策の費用を新たに捻出しなければなりません。
それでもクラスターが発生してしまった場合は、メディアに騒がれ、主催者に落ち度はないかと粗探しをされます。
様々な人が集って、ダンスを観て、互いに感性を刺激し合うという大きな役割をもつ劇場が感染を拡大させる広場のような扱いをされます。
メディアは普段、劇場のことなんか全然扱わないくせに、こういう時に限って、お祭りのように騒ぎ立てます。なんだか楽しそうに。
私はこういう喧騒に巻き込まれても、粗末な正義心に立ち向かうエネルギーを持てません。
だから、自分が主催する公演で、こういう状況を招きたくありません。
上演に向けて努力している団体もあります。
それはそれで応援しますが、私にはできないというだけの話です。
このコロナ禍では劇場外で起こる様々なリスクを背負って本番をやっても、劇場での上演は結局、観に来る(観に来てくれる)観客だけに向けたものになります。
そのことにどんな有意義な意味があるのか、私には見出せませんでした。
こういったいくつかの理由で上演を延期することにしました。
ウイルスも感受性も目に見えないもので、目に見えないものたちが、人を幸福にも不幸にもさせるのですね。
いろんなきっかけがあって、12月の公演を企画しました。
一番大きなきっかけは、幼いダンス仲間との出会いでした。
企画当初はこんな世の中を全く想像できていませんでしたが、ここは落ち着いて、また1つ1つ積み重ねていこうと思います。
そして延期という選択肢を取ることで、ここまで続けてきたメンバーとまた改めて研鑽を積んでいこうと思うわけです。
延期後の日程は決まり次第報告いたします。
楽しみにしてくださっていた方々には申し訳ないという気持ちもありますが、まずは皆さんの心身の健康を心から願います。
難しい世界ですが、改めて、私はこれからも続けることを約束します。
Sさんの好きな言葉を借りて、もじって、こうします。
「寂しくなる頃に、ふらっと来れる場所、必ず用意します。その時は、決してタダでは帰しません。」
そんな舞台にしてみせます。
またお会いしましょう。
井上大辅
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