6年前に観たダンス作品が、新しい衝撃を引き連れて、記憶の奥のほうから飛び出してきた。イギリスを拠点に活動するカンパニーの作品だったんだが、あのダンス、あのシーンは、今パレスチナで起こっていることを表していたんだと。現在進行形で現実に起きている悲劇を、私はあの時のダンス公演で既に観ていた。
あの時の私は、イスラエルやパレスチナがそれぞれに抱える苦しみや憎しみについて何も知らなかった。そして、あの作品が本当にパレスチナについて表現したダンスだったか、創作者の真意は分からない。
”あの時のあれ”が後々になって、自分に影響を及ぼしていることに気付いたりするのがアートの魅力であり、恐ろしさ。あの時にあのダンスを観たことが、今も繰り返される憎悪の応酬に私が向き合うヒントになっている。
あのダンス作品のラストを思い出すことができない。
2024年1月にイスラエルのダンスカンパニーであるバットシェバ舞踊団が来日するらしい。本当に素晴らしいカンパニーだが、今は観る気にはなれない。観ていいものではないという忌避感がある。なぜならイスラエル大使館が後援に入っているから。ここ数年、コロナで中止を余儀なくされていた中での待望の来日公演だった、それが平時ならば。
病院を破壊して、子どもや病人を問答無用に殺すことを許す理由など存在しない。核を使っていい理由などひとつもない。そんなことがまかり通る理由などあるわけがない。イスラエルは、このシンプルで明確な事実に反する国家として私の目に映っている。理屈を並べて虐殺を肯定する国家が後援するアートに、ブラボーなどと言って拍手している観客の姿を想像するだけで寒気がする。
彩の国、北九州、びわ湖ホールは予定通り上演を敢行するのだろうか。日本のコンテンポラリーダンスに長年尽力してきた有数の公共ホールが下す決断は、今後の日本のコンテンポラリーダンスやアートに大きな影響を及ぼしていくはずだ。希望はもてない。
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