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「娯しみ」と書いて、「たのしみ」って読むんだってさ

執筆者の写真: 井上大辅井上大辅

「いい加減、黙っているわけにもいかないぞ!自分の創作活動のためにも、言葉を発信しなさい!」と自分を焚きつける気持ちと、

「けれども、世の中であまりにいろんなことが起きすぎていて、何かを言葉にするのは鬱陶しい…」というような気持ちが綯い交ぜだ。


相変わらず舞台には立っていない。次に舞台に上がる時は、私は新人のような気持ちで初々しく公演をする、かもしれない。

会場にわざわざ足を運んで観たいと思う公演も、映画も、コンサートもない。コロナ禍でやるものの質ってそんなもんだと思う。


では、現在の私のエンターテイメントってなんだろうか?


Youtubeをよく観るようになった。もう何年も前のことだけど、小学校にワークショップをしに行くと、そこにいる子供たちの将来の夢がYoutuberだったりして、その当時はYoutubeに全く興味がなかった私は、子供たちの流行へのアンテナの鋭さに驚いた。今の小学生はどんな将来を思い描いているのだろうか。


東京オリンピックは全く観なかった。正確に言うと、目に入れないようにした。冬に開催されたそれも観ていない。観なくてよかった。今後も観るつもりはない。

オリンピックの感動は、どこぞのオヤジとどこぞのオヤジの間で行われる収賄を元手に生まれている。オリンピックだからこそ、それはものすごくタチが悪い。選手自体に罪はない、という巷の言説に乗っかってみると、だったらなおのこと、罪のない人たちを罪深い祭典に引きずりこむなよ、と思う。

みーんながどこぞの親父たちに搾取されている構造とは、私は距離をとる。その手始めに、AOKIのスーツは買わない。これまでも買ったことないから、金輪際買わない。


夕飯の後、家族で散歩がてら近所のカフェにコーヒーを飲みに行ったりする。テラス席があって、夜は人が少ないから安心して利用できる。

人のいないところに遊びにいくのは得意だ。監視員しかいないプールで、ブルーのリゾート的なドリンクをバッチリ赤いストローで飲んだ。


舞台には立っていないけど、身体は動かし続けている。むしろ精力的に舞台で活動していた頃より、自分の身体をじっと見つめ直すことができている。


何かしら特別なことをやっているわけではないけど、毎日子どもの成長とともに自分の人生を進められていることは、何よりも特別な体験であり、エンターテイメントになっている。

この特別な体験よりも強いエンターテイメントを、コロナ禍以前の劇場で得られたことはあっただろうか。あの頃と今と、私の感受性も変化している、より良い方向へ。


日本は今、カタストロフィ。これから先、何かが良くなる兆しがない。

それでも私は、私の日常のたくましい息吹を感じながら、進めている。それは実にエンターテイメントだ。

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