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1999年8月に新宿の天ぷら屋にいたおっさんたち

執筆者の写真: undefined

この季節の私のイメージは、夏休みと敗戦。甲子園なんかも風物詩だが、私には試合を中断して行われる黙祷の方が印象深く、結局は戦争にイメージが結びつく。甲子園で鳴るサイレンに、私は空襲警報を重ねる。


高校1年生の8月だったか、新宿のスペース・ゼロという劇場で公演する機会があった。私は演劇部だった。


本番は無事に終わり、観に来てくれた演劇部OBの先輩が、新宿のどっかにある小さな天ぷら屋を探してきて、食事に連れて行ってくれた。店に入るやいなや、店主や客に煙たがれるような目で見られた。あの雰囲気は忘れられない。


食事をしていると、常連客っぽい人から「君が代の詩の意味を知ってるか」と突然問われた。私は音楽の授業で教わったことを答えようとしたが、その話がまだ言い終わらいないうちに全否定された。その後、戦争についてどう思うかを尋ねられた。先輩が「戦争は駄目ですよね」と言うと、すかさず店主が「戦争があったからインドが独立できたんだ」と突っ返してきた。

未来を担う若者たちと美味しい天ぷらを食べながら、戦争と平和についての対話がしたかったわけではないというのは明白だった。夜の新宿の路地裏の天ぷら屋にガキが入ってくんじゃねえってことだったんだろう。確かに場違いだったかもしれない。


あの天ぷら屋は、冷笑やらハラスメントやらマウントやらファルスやら、地獄がドロドロと煮えたぎっている場所だった。あの人たちの認識はほとんど間違ったものだったし、そのせいか味が全然思い出せない。陰湿な人が揚げた天ぷらは、それでもカラッとしてたんだろうか。


実際に戦争を体験した世代ではないが、それでも8月はとりわけ胸が苦しくなる。そんな8月ももう終わる。


胸が苦しくなるたびに言う。胸が苦しくなくても何度でもしつこく言う。

戦争反対!


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